CASE STUDY

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なぜ大正製薬はインバウンド市場で勝ち続けられるのか? ゼロサム思考を打破する、NOVARCAとの戦略的共創

宍戸正臣様(大正製薬株式会社 マーケティング本部⻑)

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取材・文:NOVARCA 撮影:NOVARCA
OVERVIEW

日本のインバウンド市場が急速に回復・成長する中、いち早く戦略的な手を打ち、大きな成果を上げ続けている企業が、大正製薬株式会社様です。本記事では、同社がなぜインバウンド市場で勝ち続けることができるのか、その背景にある独自の戦略を、私たちNOVARCAとの共創の軌跡と共にご紹介します。

課題

  • 縮小する国内市場のゼロサム思考から脱却し、新たな成長機会を創出したい
  • インバウンド特有のブランド毀損リスクを回避し、医薬品の正しい情報を届けたい
  • 既存のスター商品に続く「Nextスター商品」を戦略的に育成・創出したい

施策

  • インバウンド戦略のパートナーとしてNOVARCAが参画し、戦略立案から実行までを伴走
  • 「旅マエ・旅ナカ・旅アト」の消費者ジャーニーに基づいた統合マーケティングを展開
  • データ分析に基づき、ポテンシャルの高い市場(ベトナム等)と商品を選定し、KOL施策を実施

成果

  • 先行者優位を確立し、インバウンド売上を飛躍的に向上
  • ベトナム市場で特定商品がECサイトで売り切れるなど、爆発的なヒットを創出
  • インバウンドを起点としたブランド価値向上が、国内商品の単価アップにも貢献

ポジティブサムへの転換 – インバウンド戦略始動の背景

「日本のマーケターはゼロサム思考に陥っている」。これは、大正製薬様が国内市場に対して抱いていた強烈な問題意識です。人口減少と共に市場が縮小していく日本国内で、価格競争のような消耗戦を繰り返すのではなく、新たな成長機会、つまり「ポジティブサム」な市場をどこに見出すのか。その答えの一つがインバウンドでした。

「先行者優位を取る」。その明確な意思のもと、大正製薬様は多くの企業がまだ様子見をしていた段階から、本格的なインバウンドへの取り組みを再始動させました。

「餅は餅屋に」- NOVARCAとの協業を選択した理由

インバウンドは大きな機会である一方、特有のリスクも存在します。特に製薬会社にとって、商品の有効性と安全性をいかに正しく海外の生活者に伝えるかは生命線です。大正製薬様は、「グレーゾーンで人を騙すような商売は絶対してはいけない」という強い信念のもと、ブランド毀損のリスクを強く警戒していました。

そこで大正製薬様がパートナーとして選択されたのが、私たちNOVARCAでした。「餅は餅屋に」。医薬品という専門性の高い領域だからこそ、インバウンドのプロフェッショナルとして、ブランド価値を守りながら成長を加速させる戦略をご提案し、安心してアクセルを踏める体制構築をご支援しました。

需要の引き上げ方 – 「旅マエ・旅ナカ・旅アト」のジャーニー設計

では、具体的にどのようにして海外生活者の需要を引き上げているのでしょうか。私たちが大正製薬様にご提案し、共に推進しているのが、「旅マエ・旅ナカ・旅アト」の消費者ジャーニーに基づいた一気通貫の施策です。

  • 旅マエ(認知獲得): SNS等を活用し、訪日前に商品の認知を高め、購買意欲を醸成。
  • 旅ナカ(売場強化): ドラッグストアなどの店頭で商品を実際に手に取ってもらい、購入に繋げる。
  • 旅アト(越境EC・リピート): 帰国後も越境ECや次の訪日でのリピート購入を促す。

この一連の流れを戦略的に設計・実行することで、単なる一過性のインバウンド消費で終わらせず、継続的な売上増加とファンの育成を実現しています。

 

プロダクト戦略 – スター商品をどう育て、次に繋げるか

インバウンドで何を売るのか。大正製薬様のプロダクト戦略は非常に示唆に富んでいます。同社は商品を以下の3階層に分けて戦略を組み立てています。

 

  1. スター商品: 既に大きな売上を誇る、ブランドの顔となる商品。
  2. Nextスター商品: 次のスター候補として、戦略的にプロモーションを行う商品。
  3. 育成商品: 今後、長期的な視点で育てていきたい商品。

 

Nextスター商品の選定にあたっては、私たちNOVARCAが市場を徹底的に分析。データに基づき、「子ども用は中国に全然ない」「中国の人は痔を自覚している人が多いけど、痔の薬はあまりない」といった現地のインサイトを導き出し、勝機のある商品を特定しました。

 

中国からASEANへ – 地理的拡大で見出した新たな勝機

インバウンドのメリットは、「地理的拡大が無限大」であることです。この「地理的拡大」を具現化するため、私たちがご支援したのがベトナム市場でのKOL施策です。在日ベトナム人KOLを対象に、鉄分とコラーゲンを配合した商品「アルフェ」の勉強会を一度開催しました。すると、参加したKOLたちがその価値を自発的にSNSで拡散。瞬く間に情報は広がり、ECサイトの在庫がゼロになるほどの爆発的な売れ行きを記録しました。

「本当にいいものを現地の人の感覚と言葉で拡散してもらえれば、日本に来たときに我々の最もいいと思って世に出している商品を手に取ってもらえて、それが需要になっていく」。

この事例は、まだ情報が飽和していないASEAN市場の大きな可能性と、的確なKOL施策の有効性を見事に証明しています。

 

成功の鍵は「組織」と「意思決定」

これら数々の成功を支えているのは、大正製薬様の組織体制と意思決定の速さです。インバウンド事業を特定の部署任せにするのではなく、予算と権限を持つ責任者の直轄プロジェクトとして推進。有能な人材を集め、部門を横断して一気にプロジェクトを回すことで、スピード感のある施策実行を可能にしています。

「この事業は、ちゃんとやればROI(投資対効果)は返ってくる」。この確信が、機会が見えたら即座に投資を入れるという、大正製薬様の迅速なディシジョンメイクを支えているのです。

まとめ

大正製薬様のインバウンド戦略の成功は、決して偶然の産物ではありません。

  • 国内市場への危機感と、成長市場へ向かうポジティブサム思考
  • リスクを的確に捉え、NOVARCAという専門家と組む「餅は餅屋」の思想
  • データに基づいた戦略的なプロダクトポートフォリオ
  • 部門横断で迅速に動けるプロジェクト型の組織体制

 

そして、これらすべてを力強く推進する経営層のリーダーシップ。私たちNOVARCAは、こうした大正製薬様の明確なビジョンと戦略を、インバウンドマーケティングの専門知識と実行力で支えるオールバウンド戦略のパートナーです。これからもクライアント様と共に「国境の先に、新常識」を創造してまいります。

大正製薬様のように、インバウンドを新たな成長の柱としたい、あるいは既存の取り組みをさらに加速させたいとお考えの企業様は、ぜひ一度NOVARCAにご相談ください。

宍戸正臣様
大正製薬株式会社 マーケティング本部⻑
入社後、営業本部で活躍。マネージャーとして日本一のセールスとなった後、営業企画部長、マーケティング本部第1ユニット(ドリンク剤担当)部長、調査部長などを歴任。その後、研究開発本部 商品開発部長として法規制の厳しい製薬会社のR&Dにも携わる。戦略策定から研究開発、商品企画、調査、マーケティング、営業と幅広く活動。2022年よりマーケティング本部に復帰し、現職。
取材・文:NOVARCA 撮影:NOVARCA
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