CASE STUDY

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インバウンドを一過性で終わらせない。資生堂がNOVARCAと共に推進する旅マエ・旅ナカ・旅アトをつなぐオールバウンド戦略

森 智彦様(資生堂ジャパン株式会社 事業戦略開発部 ツーリストマーケティング開発グループ グループマネージャー)

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取材・文:NOVARCA 撮影:NOVARCA
OVERVIEW

コロナ禍を経て、再び活況を取り戻しつつあるインバウンド市場。しかし、単に訪日客の数や売り上げを追うだけではなく、その先にいかにして「越境EC」や「現地での継続購入」につなげるかが、これからの企業の成長を左右します。

本記事では、資生堂ジャパン株式会社 事業戦略開発部 ツーリストマーケティング開発グループ グループマネージャーの森氏が語った、資生堂の「オールバウンド戦略」と、その中で成長を遂げる「IHADA(イハダ)」や「エリクシール」などの事例について紹介します。

課題

  • 組織・施策の分断:従来は「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」のマーケティングがそれぞれ別の部署や現地法人によってバラバラに行われており、一貫した顧客体験の設計が困難だった
  • 一過性消費からの脱却:インバウンド需要を単なる一時的な売上で終わらせず、帰国後も商品を使い続けてもらう(ファン化・LTV最大化する)ための循環作りが必要だった
  • 市場変化への対応:「置いておけば売れる」時代が終わり、国ごとのトレンドや顧客インサイトを深く理解した上でのマーケティングが求められていた

施策

  • 組織横断チームの発足:昨年8月に「ツーリストマーケティングチーム」を立ち上げ、組織間の壁を取り払い、一気通貫したコミュニケーション設計を開始した
  • データ起点の越境EC展開:「IHADA」のように国内インバウンドで火がついた商品をNOVARCAと共にデータ分析し、戦略的に越境ECのラインナップへ組み込むインバウンドプロモーションでもアプローチを実施
  • 日本限定発売を訴求:「エリクシール」「CPB」「SHISEIDO」などを筆頭に、日本でしか売っていない、提供できない価値を訴求して、海外消費者へのプレゼンス拡大を画策

成果

  • インバウンド起点モデルの確立:「IHADA」において、インバウンドでの認知爆発が越境ECでの指名買いにつながるという、理想的な成功パターンを実現した
  • 循環(ループ)の構築:旅ナカでの出会いを起点に、帰国後も越境ECや現地リテールへ誘導する「旅ナカと旅アトをつなぐループ」を構築
  • オールバウンド視点の組織での定着:インバウンドとアウトバウンドを分断せず統合的に捉える視点が生まれ、一人の顧客の旅に寄り添い続ける体制が整った

組織横断で挑む「ツーリストマーケティング」の立ち上げ

資生堂は、「日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指すミッションのもと、インバウンドを単なる一時的な売り上げ機会とは捉えていません。

日本は世界に向けた「ショールーム」であり、訪日中に資生堂の商品と出会ったお客様が、帰国後もその商品を使い続け、ファンであり続けてくれること。この循環を作ることこそが重要であるとし、2024年8月に「ツーリストマーケティングチーム」を立ち上げました。

従来は、「訪日前(旅マエ)」「訪日中(旅ナカ)」「帰国後(旅アト)」のマーケティングが、それぞれ別の部署や現地法人によってバラバラに行われていました。しかし、お客様にとっては一人のジャーニーです。この組織間の壁を取り払い、一気通貫したコミュニケーションを設計することが同チームの狙いです。

事例1:ドラッグストアから火がついた「IHADA」の躍進

オールバウンド戦略の成功事例として、森氏が挙げたのがスキンケアブランド「IHADA(イハダ)」です。

興味深いことに、IHADAは当初からインバウンドを強く意識して仕掛けたブランドではありませんでした。日本のドラッグストアで「花粉症に効くコスメ」として訪日客や在日外国人の目に留まり、そこからSNS等を通じて「神コスメ」としての認知が拡大。結果として、インバウンド需要が爆発し、それが越境ECでの指名買いにつながるという、理想的なインバウンド起点型の成功パターンを辿りました。

これは、「インバウンドでの配荷や棚の状況」と「越境ECでの売り上げ」が連動していることを示しています。資生堂では、国内での売れ行きやマーケティング指標を分析し、どの商品が「刺さる」かをデータドリブンに見極め、戦略的に越境ECの枠組みに乗せていくアプローチをとっています。

事例2:日本先行発売の「エリクシール」を日本購入の価値として訴求

もう一つの重要な戦略は、「日本で買う理由」の明確化です。持続的な購買を促すには、「わざわざ日本に来てまで買う理由」が必要不可欠です。

そこで資生堂が注力しているのが、主力ブランド「エリクシール」などにおける「日本先行発売」という価値の訴求です。グローバルで展開されているブランドであっても、「日本に行けば最新の商品がいち早く手に入る」という状況を作り出すことで、訪日客にとっての特別な購買動機を創出しています。

ツーリストマーケティングチームがハブとなり、こうした「日本ならではの価値」を旅マエの段階からNOVARCAと共に戦略的に発信。価格メリット以上の「体験価値」を提供することで、指名買いを促進し、ブランドへの愛着を深めることに成功しています。

成功の鍵は「インサイト」の発掘と「オールバウンド」な視点

森氏は、インバウンド市場の変化についても触れました。かつてのように「置いておけば売れる」時代は終わり、現在は国ごとのトレンドや顧客インサイトを深く理解する必要があります。

例えば、韓国や中国の美容感度の高い層に対し、日本の「研究開発力」や「成分へのこだわり」をどう伝えるか。また、どの国の・どの属性の顧客が・何を買っているのかというデータを蓄積し、それを次のマーケティングに活かすこと。

資生堂の事例は、インバウンド(Inbound)とアウトバウンド(Outbound)を分断するのではなく、NOVARCAの提唱する「オールバウンド」として統合的に捉え、一人の顧客の旅に寄り添い続けることの重要性を物語っています。

「インバウンドに全社で取り組みたいが、どこから手をつければいいか分からない」「部門間の連携がうまくいかない」。そんなお悩みをお持ちの企業様は、ぜひ一度NOVARCAにご相談ください。

森 智彦様
資生堂ジャパン株式会社 事業戦略開発部 ツーリストマーケティング開発グループ グループマネージャー
2015年資生堂入社後、日本国内の営業に従事。2019年より日本事業の戦略プランニングに従事し、事業戦略構築を担当。2024年よりツーリストマーケティング専属チームを組成し、クロスボーダーマーケティングの推進、越境ECの立ち上げを担当し、2025年より現職。現在は、越境EC事業のリードに加え、アジアを中心に拡大する訪日外国人の増加を契機と捉えた、新たなクロスボーダーマーケティングの開発に取り組む。
取材・文:NOVARCA 撮影:NOVARCA
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